ドコモとKDDI、コロナ不況下で勝敗を分けるのは「携帯事業」ではない
ドコモとKDDI、コロナ不況下で勝敗を分けるのは「携帯事業」ではない
NTTドコモ(以下、ドコモ)とKDDIの株価が好調です。 在宅勤務や休校で外出を控える動きが全国的に広がるなかで、通信インフラの利用頻度が増えることから、底堅い値動きとなっているのです。また、通信事業はコロナ不況の影響を相対的に受けにくい上に、5Gの本丸として「コロナ下でも強い株」という認識が強まっています。 両社が強いのは、オンライン需要が高まっているからなのか? この問い、短期的には正解ですが、長期的には不正解です。ドコモとKDDI、両社の本当の強みは何なのか? 私、テクニカルアナリストの馬渕磨理子が、3分間で通信業界の未来を“知り放題プラン”でお届けしましょう。
通信業界を知るキーワード「アープ」と「アーパ」
ドコモとKDDIの2社ともに、営業利益は1兆円超え。営業利益率は20%を超えており、これはかなり高い水準に入ります。両社は、通信事業と非通信事業を柱としています。下記のように、両社で売上高、営業利益率ともに大差がないことを抑えておけば、ここではオッケーです。
【ドコモ 売上割合】 ・通信事業:8割(約4兆円) ・非通信事業:2割(約8800億円) 【KDDI 売上割合】 通信事業:7.6割(約4兆円) 非通信事業:1割 (約5700億円)
さて、話はここから。本稿の結論とは関係ないため、時間のない方はこの章の最後まで読み飛ばしていただいて結構です。 通信業界で重要視されている指標に、ARPU(アープ)とARPA(アーパ)というものがあります。これらの言葉、初めて耳にする方も少なくないでしょう。簡単に説明します。 「ARPU(アープ)」はユーザー1人あたりの月間平均売上高のこと。 「ARPA(アーパ)」は、1アカウントあたりの月間平均売上高のことです。
両者は混同しやすいため、最後の一文字で見分けましょう。
ARPUは“U”なのでuser。
ARPAは“A”なのでaccountと覚えられますよね。
ちょっと理解が必要なのはARPA(アーパ)です。 ARPAは、一般端末(フィーチャーフォンやスマートフォン)に加えて、タブレット・モバイルWi-Fiルーターなど複数の端末を利用する「マルチデバイス」を推進する中で導入された指標です。最近、一人でiPhoneとiPadを持っていて、さらにモバイルWi-Fiを持っている方って少なくないですよね。そういう複数アカウントを持つユーザーが増えてきたために生まれた指標です。この指標を見ると、通信業界が抱えている問題が透けて見えてきます。 ドコモは、通信事業のARPUを開示していますが、2019年度は前年と比べて減少しています。
【ドコモ ARPU】(1人あたりの平均売上高)
2016年度 4,440円
2017年度 4,710
2019年度 4,630円←減少!
一方、KDDIが開示しているのは、ARPAです。
ここ、ARPUではないので注意です。 下記のように、通信事業のARPAは減少しているのに対し、非通信事業のARPAは増加しています。
【KDDI ARPA】(1アカウントあたりの平均売上高)
◆通信事業
ARPA 2018年度 5,910円
2019年度 5,860円←減少
◆非通信事業
4ARPA 2018年度 590円
019年度 700円←増加
少し複雑な説明でしたが、抑えておくべきポイントはたった一つだけです。 「ドコモも、KDDIも、もう携帯だけじゃ食っていけない!」。それだけです。
現在、国内の携帯電話契約数は1億7847万と、日本の人口を超えている飽和状態(19年9月末時点)。さらに、菅官房長官が携帯電話の利用料の4割値下げを提唱しています。 「第4のキャリア」として参入した楽天は、大手3社の半額以下の料金プランを打ち出しています。そこで、ドコモとKDDIがいま力を入れているのが非通信事業なのです。では、非通信事業ってなんのことでしょうか?
正直、ここまでの説明は前奏のようなもの。通信業界の未来はここからが“サビ”です
ドコモが儲ける意外な分野とは
ドコモの非通信事業とはなんでしょうか。ドコモは主に非通信事業を「スマートライフ事業」と呼んでいます。
その中身は下記の4つです。
1:動画・音楽・電子書籍等の配信サービス
2:金融・決済サービス
3:ショッピングサービス
4:生活関連サービス
特に強化しているのが金融・決済サービスです。「d払い」や「dポイント」、「dカード」のことと言えばイメージしやすいのではないでしょうか。ドコモの金融・決済サービスの取扱高は19年3月期には3.8兆円にものぼり、2019年は過去最高益を記録しています。 また、会員基盤である「dポイント」クラブ会員も7,300万人を突破。現在、d払い取扱高は2600億円、d払いユーザー数は2,200万人、決済・ポイント利用可能箇所は143万カ所と成長傾向です。
さらに、1月30日にドコモはリクルートと業務提携契約を発表。これにより、「じゃらん」「ホットペッパービューティー」「ホットペッパーグルメ」などのWebサービスを通して予約した店舗でのサービス利用でdポイントがたまるようになります。
いまのドコモは、ドコモは決済で儲けようとしているのです。ここから先は、いかにパートナー企業を増やせるかがポイントになるでしょう。
KDDIの非通信事業「ライフデザインセグメント」ってなんだ?
続いてKDDIの非通信事業です。答えを急ぐと、こちらもドコモ同様に金融事業です。 KDDIは、銀行・決済保険・証券を一体としたauフィナンシャルホールディングスの事業に力を入れています。
今年2月9日、KDDIは「じぶん銀行」から「auじぶん銀行」と名称を変更しました。これは、今後KDDI色を強めていくための戦略のひとつでしょう。 「カブドットコム証券」も同様です。
2019年2月、KDDIはカブドットコム証券に資本参加を表明。KDDIと、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のカブドットコム証券が融合し、2019年冬に「auカブコム証券」が誕生しました。KDDIは、着々とauフィナンシャルホールディングスの構想を進めているのです。
同社は、auカブコム証券でauじぶん銀行の自動引き落としを設定すると、じぶん銀行の円普通預金の金利を0.001%から0.01%へと10倍引き上げるなどの優遇策を打ち出しています。ドコモと比べ、KDDIの金融事業は銀行・証券の色が強いと言えます。
KDDIによると、将来的には2022年時点でライフデザイン領域の売上高を、1.5兆円規模にまで拡大させる予定と発表しています。
ここまで読めば、結論は明らかです。 ドコモもKDDIも、通信業で儲け続けるのは難しい。そこで膨大なユーザー数を武器に、金融業に力を入れているのです。それを踏まえた2020年現在、両社のレースはドコモのほうがややリードといったところでしょうか。コロナ不況下でも負けない理由は、通信業以外にもあったのです。
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