単位が取れないのなぜ? 大学の知能検査で知った「自分」 困りごとの背景に発達障害
単位が取れないのなぜ? 大学の知能検査で知った「自分」 困りごとの背景に発達障害
2/12(木) 17:02配信
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毎日新聞
井上智介
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健太さんは大学の支援を通して、困った時は誰かに相談することの大切さを学んだという=佐賀市の佐賀大で2025年10月、黒田阿紗子撮影
まさか、こんなに悪いなんて。パソコンの画面に表示された成績表に、ぼうぜんとした。
佐賀大大学院1年の健太さん(仮名、24歳)が、九州の有名進学高校から現役で佐賀大学に入学したのは2020年。大学1年の前期終了後、単位が取れた授業科目は二つだけだった。
サボったつもりはない。だが、確認すると未提出の課題が多かった。新型コロナ禍の当時、実家で全ての授業をオンラインで受けていた。大学のポータルサイトはリポート提出や動画視聴の呼びかけであふれていた。それをことごとく見落としていた。
高校でも課題を出せないことがよくあったが、それでも何とかなっていた。「ハードルにつまずいた」。発達障害の特性が関係しているとは、この時は思いもしなかった。【黒田阿紗子、寺町六花】
【図でみる】発達障害のある人にみられる困りごとの例
後で困ることは分かっていても…
CSルームが入る佐賀大の「ウェルビーイング創造センター」では、学修支援だけでなく、障害や特性を持つ学生の就職やキャリア形成支援などに一体的に取り組んでいる=佐賀大提供
2年になると対面授業がスタートし、1人暮らしを始めた。日によって、授業がある時間や教室が違う。出席は不安定だった。
行かなければ単位が取れず、後で困ることは分かっている。それなのにエンジンがかからない。どうして体が動かないのか考えているうちに時間になり、「もういいや」と諦めた。
人に話しかけるのはもともと苦手だ。同じ顔ぶれと一日を過ごす高校までは「自然に」できた友達が、大学ではできなかった。サークルやアルバイトも、授業がないがしろになりそうで手が出せなかった。
3年を目前にして、留年が決定的になった。見かねた母親が、指導教員に相談。紹介されたのが、大学の「キャンパスライフサポート(CS)ルーム」だった。
CSルームは、約5000人が学ぶ本庄キャンパス(佐賀市)の中心に位置する。心理職の資格を持つ4人のコーディネーターが学生の相談にあたる。障害や病気がある学生から申請を受け、学ぶにあたっての障壁を取り除く「合理的配慮」の調整もしている。
得意と不得意が分かる検査
佐賀大で受けた知能検査をきっかけに発達障害と診断された大学院生の健太さん(右)と、当時を振り返る中島俊思・同大准教授=佐賀大で2025年10月、黒田阿紗子撮影
「人並みのことができない。焦っています」。1時間ほどかけて説明すると、臨床心理士でCSルーム責任者の中島俊思准教授(46)に提案された。
「得意と不得意が分かる検査があるのだけれど、受けてみますか」
ウェクスラー式知能検査の成人版「WAIS(ウェイス)」。認知能力の特徴を把握する、いわゆるIQ(知能指数)テストだ。医療機関では、発達障害の診断を補助するものとして使われている。それを大学で無料で提供しているという。
「受けます」。迷いはなかった。
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困ったときの「どうする」 考えられるように
CSルームが入る佐賀大の本庄キャンパスの校舎=佐賀大で2025年10月、黒田阿紗子撮影
佐賀大大学院生の健太さんは、24年秋、忘れがたいミスをした。
大学院入試の出願に必須である外部の英語テストの受験料を払いそびれた。支払期限の「13日」を「31日」と見間違えてメモしていた。テストを受けられなければ出願できない。
以前の自分なら、そこで諦めたかもしれない。だが失敗した時には誰かに相談すること、助けを求めれば伝わることを、もう知っていた。大学の入試課で、今からでも間に合う別のテストがあると教えてもらった。
「変わったな」。自分を少し見直した。大学院生となった今は、特別な支援や配慮を受けていない。研究は「ぼちぼち」やっている。この調子なら、最後までハードルを越えられそうだ。
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
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